戦いのシンバル

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悲運のエースに、なんてならない。

今日は高校野球準決勝第一試合、金足農業高校日大三高を見ていました。これまでの試合と同様、金足農業は不動のエース吉田君が先発し、日大三高を2-1で破りました。

 

今日の試合も、やはり吉田君の投手としての非凡な才能を見せつけられました。これまでの奪三振ショーとは打って変わり、変化球でカウントを稼いだり低めの球で凡打を打たせるなど、巧みな投球が光りました。日大三高の4番打者は「インコースをストレートで突いてくるだろうと予想していたら、変化球を低めに集められました。」と、予期せぬ投球術に翻弄された感じでした。

 

スコアが物語る通り、今日の試合も接戦でした。2点を先行した金足農業でしたが、8回裏に二死走者一三塁から四番打者にタイムリーを打たれました。一点差に詰め寄られて、なおランナー一塁二塁。奇しくも前回金足農業が準決勝に進出した34年前の今日の試合では、8回裏にPL学園の桑田に逆転2ランホームランを許して敗れています。ちなみに今日の始球式を務めたのがこの桑田。金足農業にとっては非常に嫌な展開だったと思います。

 

しかしその嫌な雰囲気を吹き飛ばしたのはまたしてもエース・吉田君でした。ピンチの場面でも動じず、セットポジションに入っても長く球を持ちます。これでもかというくらい長く球を持ち続けることもあります。そして投げた球は打者のタイミングを狂わせ、続くバッターから三振を奪います。

 

そして最終回。先頭打者を内野ゴロに打ち取り、アウトあと二つ。続くバッターもピッチャーへのゴロとなり、楽々ツーアウト・・・かと思いきや、ファーストの高橋君も打球を捕ろうとしてベースを離れており、一塁に投げられず同点のランナーの出塁を許してしまいます。日大三高は代打を出し、このバッターも見事にサード強襲のヒットを放ちサヨナラのランナーとして塁に出ました。一死一塁二塁。西東京大会決勝ではサヨナラホームランで優勝を果たし、準々決勝でも終盤でゲームをひっくり返した日大三高。ここも流れは日大三高に傾きかけている絶体絶命の場面です。

 

しかしここでも吉田君は奮起します。続くバッターには速球で押し、2人のバッターをフライで打ち取りゲームセットとなりました。

 

ここで力尽きるピッチャーは実に多いです。一人で投げぬいてきたけど相手の攻勢を止めることができず、終盤に決勝点を入れられて突き放される回は幾度も見てきました。そのたびにエースピッチャーは「エース、終盤で力つきる」「みんながいたからここまで来られました」みたいな取り上げ方をされて「悲運のエース」扱いされる場面もよく見てきました。

 

しかし吉田君はそんな悲運のエースにはならなかった。「自分がこのチームを引っ張るんだ」という気持ちが人一倍強いのでしょう。たとえエラーでピンチを招いても、「気にすんな!」の一言で野手を鼓舞して元通りにマウンドに戻り、自分の普段通りのピッチングをする。ランナーは出しても決勝点は与えない。粘り強さ・・・と言うには言葉が足りないと思います。何か「自分のピッチングを思い切りすれば必ず押さえられるんだ!」という信念で投げているような気がします。

 

大エースの吉田君ですが、決して孤高のエースなどではありません。吉田君は牽制もとてもうまいのですが、他の投手と違うのは全力で牽制球を投げることです。まるでキャッチャーに向かって投げるかのように思い切りファーストの高橋君に向かって投げてきます。受けるファーストも大変かとは思いますが、実際今日の試合でこの全力の牽制球をファーストが取れずに後逸してしまいランナーを二塁に進めてしまう場面がありました。

 

しかし吉田君はこの「全力牽制」をやめる気配はありませんでした。相変わらずランナーが出るとファーストに向かって物凄い速さの牽制球を投げてきます。

 

「また思い切り投げたら捕れないかな」「牽制は構えだけにしとこうかな」という考えは吉田君にはないのでしょう。それはファーストの高橋君を信頼してのことだと思います。「捕れなくてエラーしたって気にすんな!また思い切り投げるから捕ってくれよな!」吉田君の牽制球にはそんな仲間への信頼が込められていると思います。

 

さぁ、明日はいよいよ決勝戦大阪桐蔭が優勝すれば史上初の2度目の春夏連覇、金足農業が優勝すれば東北勢初の優勝。まさに第百回大会の決勝を飾るにふさわしい組み合わせと言えるでしょう。明日は僕は渋谷のスポーツバーで観戦し来ようと思います。

 

がんばれ、金足農業!