戦いのシンバル

自由な生き方を模索するライフブログです

負けた相手に、再び立ち向かう勇気はあるか

昨日に引き続き、夏の高校野球準々決勝第4試合 金足農業-近江の試合についてまたお話ししたいと思います。

 

昨日書いたように無死満塁からスクイズで2塁ランナーまで帰ってくるサヨナラ劇がありましたが、そのほかに「これはすごいなー!」と思う場面がありましたのでお伝えしたいと思います。

 

この試合の八回表、近江の攻撃のときです。近江1点リードで迎えたこの回は先頭の9番打者が四球で出塁。続く1番バッターはバントしましたが捕ったサードがエラーしてしまい、金足農業は無死一塁二塁のピンチを招いてしまいます。終盤で僅差の展開、1点もやれないプレッシャーのかかる場面です。

 

続く2番バッターは今大会当たっているということもあり、バントはせずヒッティングの構え。しかしバットは出したもののピッチャーゴロ。誰もが投手から二塁、一塁へ送ってダブルプレーとなるプレーを予期していました。

 

しかしこのピッチャーゴロを取った投手の吉田君は、頷くようにワンテンポ置いてから三塁へ投げました。二塁ランナーフォースアウトですが、一死一塁二塁のピンチは続きます。このプレーにはテレビの実況も解説者も疑問に思っていたようでした。吉田君はボールを捕り、間をおいて三塁に投げたことから、慌てて投げてしまったわけではなく考えがあってこのプレーになったのだと思います。なぜセオリーを破って吉田君はわざわざ三塁へ投げたのでしょうか?

 

ここから先は私の勝手な推測です。しかし今大会ナンバーワンピッチャーと言われる吉田君の投手としての神髄をこの場面から読み取ることができそうです。

 

もちろん三塁にランナーを置きたくなかった、ということも考えられます。ダブルプレーをとっても二死三塁。三塁にランナーがいればエラーや暴投でも一点が入ってしまします。先ほど申し上げた通り終盤の1点はとても重いので、三塁にランナーをおくことを嫌った、ということもありえます。しかしそれと引き換えに二塁にランナーを置いてまま三番以降の打者から二つアウトを取ることのほうが、よほどリスクのある事のようにも思えます。

 

しかしこのリスクを取ることこそが吉田君のエースとしての思いだったのではないでしょうか。このとき四番に入っていた打者の北村君は、勝ち越しの1点をあげるタイムリーヒットを打った打者でした。吉田君はランナーのいる状態でこの北村君と勝負したかったのではないでしょうか。もちろんチームの勝利のことを考えれば、ダブルプレーを取って次の三番打者を打ち取れば四番の北村君との走者を置いた状態での勝負は避けられたはずです。しかしそうはしなかった。吉田君はタイムリーを打たれた北村君に対してリベンジするつもりだったのではないでしょうか。そして実際の勝負では北村君を含めた二人の打者をきっちり打ち取り、窮地を脱することができました。

 

もちろん野球はチームスポーツですので、投手個人の心情よりチームの勝利を優先すべきだという意見も十分わかります。しかし野球というのはチームプレイである一方で、本質的には「投手VS打者」という一対一の勝負だと思います。投手は打者を抑え込んでやる、打者は投手の球を打ち返してやるという真剣勝負です。そして勝負に選んだ打者の北村君には前の打席でタイムリーを打たれています。エースの吉田君は、たとえチームをピンチにさらしたとしても、この北村君を絶対に打ち取ってやるんだという鉄のような固い信念があったのだと思います。もちろん彼にも迷いがあったことでしょう。その瞬間がピッチャーゴロを取ったあとの頷きの間に凝縮されています。その瞬間に、彼はセオリーを捨て去り北村君との勝負に賭けることを選びました。彼の三塁への送球には、ピッチャーとしての熱い魂が反映されたものでした。

 

金足農業はやっぱり吉田君中心のチームなんだと思います。攻撃の時でもベンチの外に立ち、チームメートの肩に手を回してにこやかに何事かをよく話しています。その様は一瞬監督かと見まごうほどです。強いチームには必ず一人、大車輪となってチームを鼓舞する選手がいるものです。他のチームですと、大阪桐蔭の根尾君もそういったタイプの選手なのでしょう。

 

明日は準決勝の第一試合で、金足農業は日大三と対戦します。第2試合は大阪桐蔭済美の試合ですが、どのチームが優勝してもおかしくないと思います。僕は優勝候補筆頭は大阪桐蔭だと思いますが、対抗は金足農業だと思います。

 

明日の準決勝、テレビの前でがっつり観戦したいと思います(*^^)v