「読書の鉄人」~本と本を「掛け算」する。
突然ですが、みなさんは「料理の鉄人」という番組をご存じでしょうか?
鉄壁の料理技術を誇る和洋中の「料理の鉄人」たちに、腕に自信のある料理人たちが挑戦するというこの番組。
もう20年近く前の番組ですが、僕はこの番組が好きでした。
場に厳粛な雰囲気を与える鹿賀丈史のスピーチ。
挑戦者と鉄人の間に繰り広げられるヒリヒリした展開の味勝負。
各調理場をカメラがせわしなく周り、目まぐるしく様相を変えていく二人の調理場。
挑戦者にも鉄人にも辛口なことを言う審査員たち。
エンドロール中に判定を待つときのあのBGM。
判定とともにきっちりと終わる番組。
どれひとつとっても切れ味のある番組でした。
YOUTUBEで当時の番組を見て、「こういう番組がまたあればいいのになぁ」と思いました。
すると、「ないなら自分で作ればいいか!」と思い立ちました(笑)
もちろん料理の経験があまりない僕にはその分野についてできることはないかもしれませんが、これが本ならどうでしょう?
僕もとびきりの読書家というわけでもないのですが、今年は年間100冊の読書にチャレンジしているところです。
料理よりは分がありそうです。
料理の鉄人は挑戦者VS鉄人という2人の対決になっていますが、僕はここで2冊の本を紹介する形にしたいと思います。
名付けて、「読書の鉄人」!
では実際にどのように「読書の鉄人」をブログとして展開していくのか、実例を交えながらお話ししていきたいと思います。
目次
「読書の鉄人」とは??
本の取り上げ方
「読書の鉄人」では、2冊の本を取り上げて紹介します。
ただし、2冊の一騎打ち・・・というわけではありません。
ここで取り上げる2冊はそもそも分野が違う場合もあり(小説とビジネス書、というように)、優劣を決めるべきものではありません。
そもそも僕ごときのものが筆者が渾身の気持ちで書いたものについて優劣を判断するなど、僭越な気もするのです(´・ω・`)
2冊について対決させるのではなく、2冊を並べることでどういった共通項が見つけ出せるか、どういう相乗効果が見込めるかを考えていく場としたいです。
たとえ全く論旨の違う2冊だったとしても、一つの問題について異なる見方が存在することをこのブログを通して明示することができるかと。
いわば本同士を掛け算する・・・といったイメージです。
書評ブログとは違う?
書評ブログを書こうとすると、1冊について書くのが普通だと思います。
しかし僕はこのブログにおいて3000字近く書くつもりでいるのですが、1冊についてその字数を費やそうとすると、結局ネタバレになってしまう心配があるのです(笑)
深く書いてくるつもりが、つい核心に触れてしまいネタバレとなってしまう。
それではせっかくの読者さんの本を読む機会を奪ってしまうことになりかねません。
そこで2冊取り上げて掛け算することで、ネタバレにならない程度でそれぞれの本のエッセンスを掛け合わせる。
そうすることでお互いの本の価値が比較することでより輝いて見える。
そんな実験的なやり方で本を紹介していきたいと思います。
1冊目 「マンガで身につく 多動力」
マンガで身につく 多動力 (NewsPicks Comic)
- 作者: 堀江貴文,星井博文,三輪亮介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2018/03/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
かつてはライブドアを中心に世間を賑わせたホリエモンこと堀江貴文さん。
収監されたのちも活動を続け、服役後も非常に多岐にわたる事業を展開しています。
宇宙事業、医療事業、サロン運営、メディア出演、イベント開催、投資・・・。
これだけたくさんのことを動かせる力、それが本書のテーマである「多動力」です。
もともとは活字の本から出発したのですが、まもなく 漫画版も出ました。
漫画の主人公は普通のサラリーマン。
あるとき突然会社のビルごと無人島に飛ばされます。
皆が動揺する中、上司は「とりあえず仕事しろ」と指示をし、主人公も疑問を抱きながら普段と同じようにコピーをとろうとします。
しかし、そのコピー機を解体している人がいました。
それが主人公の会社の先輩・堀口康文。
堀江さんをモデルにしているこの人物、会社では桁外れの成績を上げる一方、会社では変わり者扱いされ敬遠される存在でした。
行き場のない気持ちを抱えながらコピーをとる主人公に対し、堀口先輩はその資料を取り上げビリビリに破きます。
唖然とする主人公。
堀口先輩は言います。
「こんなコピーに意味があると思うのか。俺は会社での実績を使って、100以上のプロジェクトを回してるぞ。」
「一つの仕事をコツコツとやる時代は終わったんだ。」
「三つの肩書を持ってみろ」
「お前の価値は1万倍になる」
堀江さんならではの破天荒な言葉。
エキサイティングですね。
でも肩書を3つも持つなんて大変そうな気がしませんか?
どうしたらそんなにたくさんのことができるようになるのでしょうか?
それを解き明かすには、これからお話しする2冊目の本に言及するとより答えが鮮明になることと思います。
2冊目 「マンガでよくわかるエッセンシャル思考」
- 作者: グレッグ・マキューン,星井博文=シナリオ制作,サノマリナ=作画,?橋璃子
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2017/03/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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1冊目に続き、2冊目も「マンガでわかる」シリーズです。
主人公は小学校の女性教師。
毎日仕事に追われて好きなこともできない状態です。
ある日同窓会で幼馴染だった前沢塁と再会します。
海外のコンサルタント会社で活躍する前沢は、主人公にこう問いかけます。
「好きなことだけやってる?」
目の前の仕事に追われて好きなことだけなんてやってられない、そんなふうにこぼす主人公。
しかし前沢はそんな主人公の発言を一蹴するかのような言葉を放ちます。
「断ればいいじゃん」
それを聞いた主人公は怒って「そんなことできるわけないじゃん!」と立ち上がります。
しかし前沢は涼しい顔。
彼はこう続けます。
「実は俺も一年前までは平均睡眠時間3時間で仕事をしていたんだ」
「取引先が海外だったから飛び回っていた」
「そんな時偶然ある男性が隣に座ってね。寝る間を惜しんで仕事をしている俺に1冊の本をくれた」
「それが『エッセンシャル思考』との出会いだったんだ」
・・・自分と同じか、それ以上の激務をしていた前沢。
しかしそう淡々と話す前沢の表情には、疲れた様子はありません。
不思議に思う主人公。「何が書いてあったの?」と問いかけます。
前沢は答えます。
「99%の無駄を捨て、1%に集中する方法さ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここまで取り上げた2冊、内容が反対に見えると思いませんか?
「多動力」はたくさんの事を動かすこと。
「エッセンシャル思考」は1%に集中すること。
一見すると相いれない関係のように見えます。
しかしこの2冊の主張、実は根が同じなのです。
多動と集中
まずは「多動力」から見て行きましょう。
多動力の根幹にあるのは、「いかに無駄を排除するか」という考え方です。
さきほどの例に挙げたようなコピー取り。
これをみた堀口先輩は「こんなもんメールか口頭で十分だろ」と切り捨てます。
これを先頭に、「多動力」ではさまざまなものを「無駄」として排除します。
「寿司屋の修行なんて意味がない」
「99%の会議は無駄」
「電話をかけてくる人間とは仕事をするな」
「おかしな奴と付き合う時間は無駄」
「経費計算を自分でやるサラリーマンは出世しない」
修行、会議、電話、会社での人付き合い、経費計算・・・どれも社会で生きていくには必要そうに見えますが、「多動力」ではこれらを一切無駄と主張します。
中でも寿司屋の修行のケースはかなり説得力がありました。
寿司職人になるには寿司屋に弟子入りして修行をするのが通常のルートして考えられてきました。
「飯炊き3年握り8年」と言われ、10年近く修行してからやっと独立が許されるような世界です。
それだけ大変な業界なんだなぁと思いがちですが、この常識を破ったお店が現れました。
大阪にある「鮨 千陽(ちあき)」です。
このお店は調理師学校で寿司の勉強をした人が開いたお店でした。
その勉強期間は3か月。
10年以上が修行の常識と考えられてきたこの寿司職人の世界では、とても短い期間での独立です。
当初は「業界を舐めている」との批判も多くありました。
しかし千陽はここから快進撃を始めました。
なんと「ミシュランガイド 京都・大阪」に3年連続で掲載されたのです。
日本を代表する食どころとして知られる大阪で、通常の修行期間では考えられないようなスピードで出店した千陽がミシュランに乗ったことは大きな衝撃を与えました。
もちろん長い修行を積み重ねて大きな成果を出す人も多いと思います。
一方で「実戦こそ最高の修行」とばかりに早くに現場に立ってお客さんに向き合う千陽の存在は、「『大切なこと』に集中出来ているか?」を私たちに問いかけているかのように見えます。
「多動力」とは、無駄を排し、早く結果を出すことと言えそうですね。
では「エッセンシャル思考」ではどうでしょうか?
さきほどのように「99%を捨てて1%に集中する」というのがエッセンシャル思考の意味です。
しかし日々いろいろなことに追われている私たちにとって、どれが捨てるべきものでどれが集中すべき1%なのか、わからないですよね。
前出の前沢は、さらにこう続けています。
「90点未満は0点と同じと考えるんだ」
「厳しい基準で中途半端な選択肢に悩むことをやめる。」
「そうすれば君は間違いなく自由になれるだろう」
それを聞いた主人公は少し戸惑います。
「90点って・・・厳しすぎない?」
前沢は即答します。
「それがダメ」
「シンプルな数字で決めることで選択が合理的・論理的になる。感情が入り込む余地をなくす」
「絶対にイエスと言い切れないなら、それはすなわちノーだ」
90点以下は排除する。
つまりは90点以上のことにのみ自分の持てる力を注ぎこむ。
この主張、「多動力」と通じるところがあると思いませんか?
「多動力」の前提は、無駄の排除です。
無駄な資料作り、会議、準備・・・それらをすべて否定します。
それらを排除して作り上げた時間で、自分の好奇心の向くことをやるのです。
「永遠の3歳児たれ」
「多動力」の終盤に出てくる言葉です。
3歳の頃に返ったように、やりたいことだけやって生きていくのです。
エッセンシャル思考も同じです。
こちらも90点以下に感じることは全て排除。
エッセンシャル思考の主人公は自分のクラスで作った学級新聞が好評となりましたが、これを聞きつけた職場の先輩が学年新聞も作ってほしいとお願いしてきます。
引き受けてしまったものの、なかなか運営に手が回らず、かえって先輩から怒られてしまいました。
この話を前沢にしたことから先述の90点ルールの話につながります。
学級新聞については主人公のやりたいことだったので楽しく取り組めて好評も得ました。
しかし学年新聞はというと、学級新聞の延長のような気持ちでなんとなく引き受けてしまいました。
前沢から90点ルールについて聞かされた主人公は、学年新聞は自分にとって90点以上ではないと感じます。
そして学年新聞の仕事を断ることができたのでした。(ちなみにこの仕事を断ったことでかえって職場に好影響をもたらします。詳しくはぜひ本書をお読みください)
「多動力」・・・無駄を排除
「エッセンシャル思考」・・・90点以下を排除
この構図を見ると、両者は根本が同じであることがうかがえます。
私たちは情報が多い社会の中で暮らしています。
その中で、どれが大切でどれが無駄なのか、わからなくなることもありますよね。
そんな時は90点ルールを基準にして考えてみると判断が簡単になると思います。
そして「3歳児になったつもりで」好奇心の赴くままに生きるのです。
そこからさきに見える風景・・・どのようなものになるか、ワクワクしませんか?
みんな初めは子どもでした。
覚えていないだけで、みんな好奇心を胸に抱えて日々を楽しく暮らしていたのです。
一旦は通ったその道。
またその道を踏みしめてみませんか。
まとめ
初の試みとなった「読書の鉄人」。いかがだったでしょうか?
一見相反するタイトルの2冊でしたが、実は根っこが同じであることがわかって僕自身大きな学びとなりました。
読書の秋、これからもいろいろな本を掛け算しながら紹介していければと思います。